裁判例(最高裁判所昭和62年9月4日判決)

<判決要旨>

相続により共同相続人の共有となった財産について、共同相続人間に遺産分割の協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、遺産分割の審判を求めるべきであって、共有物分割の訴えを提起することは許されない。

弁護士西川将史のコメント

人が死亡すると、その人の財産(遺産)は、相続人が相続することになります。
相続人が複数存在する場合は、その複数の相続人(共同相続人)が遺産を共有することになります。
この場合、共同相続人は、遺産分割(どの相続人がどの遺産を確定的に取得するかを決めること)を行うことになりますが、遺産分割については、まずは共同相続人間で「遺産分割の協議」を行い、協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に「遺産分割の審判」を求めることになります。

遺産の中に不動産がある場合は、共同相続人がその不動産を共有することになり、遺産分割において、どの相続人がその不動産を確定的に取得するかを決めることになります(ただし、遺言がある場合は、原則として、遺産は遺言に従って処分されます)。

では、遺産分割の協議が調わないとき又は協議をすることができないときに、相続人は、家庭裁判所に「遺産分割の審判」を求めずに、通常裁判所に「共有物分割の訴え」を提起することができるでしょうか?

この問題について、上記判決は、相続人は、家庭裁判所に「遺産分割の審判」を求めるべきであって、通常裁判所に「共有物分割の訴え」を提起することは許されない、と判示しました。

共同相続人が遺産である不動産を共有している場合は、共有関係の解消は、遺産分割手続を経なければならず、遺産分割手続が終了して初めて、共有物分割の裁判によることができるのです。