裁判例(最高裁判所平成8年10月31日判決)
<判決要旨>
共有者が共有物分割請求をして裁判になった場合、裁判所としては、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許される。
弁護士西川将史のコメント
共有者が共有不動産について共有物分割請求をして、裁判になった場合は、裁判所が、如何なる分割の方法を採用するかを決定します(裁判所は、当事者の申立て(希望)に拘束されません)。
裁判所は、原則として「現物分割」を採用します。
ただし、共有不動産の現物分割が不可能な場合、又は、現物分割をするとその価格を著しく減少させるおそれがある場合は、裁判所は、「代金分割(競売)」又は「全面的価格賠償」を採用することができます。
このうち、裁判所が「全面的価格賠償」を採用する際の基準となる要件を示したのが、上記判決です。
上記判決が示した要件によると、①共有不動産(建物)の現物分割が不可能で、②共有者のうちの1人が長年にわたって共有不動産に居住していて、③その共有者に支払能力があるような場合には、裁判所が、その共有者を共有不動産の単独所有者とする全面的価格賠償を採用する可能性が高いと言えます。